Day3 木崎湖 (2009.8.5)
 

Angler  土谷

今回の釣魚会合宿でメインと呼べるのが三日目の木崎湖でのトーナメントであった。木崎湖に対して僕が持っていた印象は、スモールマウスがいるクリアウォーターということだけであり、僕のスモールマウスの経験は、10年前に野尻湖に行っただけであった。正直僕は久しぶりに思う存分釣りができるということで、ものすごく楽しみにしていたのであるが、反対に「もしかして釣れないんじゃないか…」という不安を抱えて当日をむかえた。

そしてやってきた当日である。僕はまず、湖の進入禁止の部分は見ておかなければと思い、星湖亭さんを出発して、湖の最先端部、農具川の流れ込み付近のポイントへと船を向けた。「あぁ、あれが入っちゃいけない部分なんだな」と眼前に広がる風景と事前に渡されていた湖の地図を照らし合わせながら船を進めたのだが、農具川に近づくにつれて、僕のテンションも落ちていった。というのも、明らかに水が濁っているのである。それもただの濁り方ではなく、まるで水中に膜が張られたような、とても高活性を期待できるような濁りではなかった。追い討ちをかけるように、入りたかった西岸には僕たち釣魚会以外の先行者がいた。「やっぱり早いな…」なんて思いながら、遠目にその人の釣りを見て、明らかに上流から流しているのがわかり、僕は船を東岸のアシ原のポイントに向けた。

個人的にアシは大好きなベジテーションである。普段バス釣りをするとしたらマッディーシャローレイクばかりで、今回もスモールマウスバスレイクなのに、ラージの大型を狙っていた僕にとって、馴染み深いポイントであり、スモールというよりラージのイメージが強いアシは、ひそかにメインにしようかと思っていたポイントである。 岸のワンドの形に沿うように生えていたアシに対し、まずはシャロークランクを投げた。強い濁りの中での定石のアプローチだろう。時折、初日の青木湖で反応が良かった、エコギアの3インチパワーシャッドのバジングを入れながらキャストを繰り返したのだが、まったく反応がない。シャロークランクをスピナーベイトへとチェンジして、深めのレンジに変えるも無反応で、痺れを切らした僕は、ポイントを西岸へと変え、先行者がまだ叩いていないであろうスポットに入った。

濁りの影響と釣れると踏んでいたアシでまさかの不発に終わって、ノーフィッシュの危機に弱気になっていた僕は、いきなり3インチパワーシャッドを取り出し、岸際を打った。すると答えはすぐに返ってきて、小さなラージが釣れた。メジャーを持ち合わせていなかった僕は、自分の手のひらを伸ばして親指の先端から小指の先端までがだいたい20センチくらいだったなという覚束ない記憶から勝手にキーパーだと判断した。

その後同じように3インチパワーシャッドのバジングで岸際を打っていくも、バイトは乗らず、のっても同じくらいのサイズであった。それからラン&ガンを繰り返して、湖を右往左往した。

 再び西岸に戻ってきたとき、他のチームとすれ違った。状況を聞けば、皆同じようなものだと言う。「やっぱり今日は難しいのかな」なんて思いながら、皆が叩いてきた進行方向とは逆の角度から岸を打ち続けた。そして若干濃い目のブッシュの際にルアーを投げ入れ、ジェットスキーの引き波にボートが取られないように、船首を動かしていたら、ラインがフッと動いた。上げてみると、それまで釣れていたサイズとは一回り違う、ラージであった。(メジャーがなかったので釣ったときは35センチくらいあるんじゃないかと思っていたが、実際に測ったら27センチであった。目の錯覚は怖いものである。)

この釣れた一匹を通して考えた結論が、@水面に反応するのは、大きくても20センチでそれ以上はボトムについているのでは?A魚がついているのは、同じカバーでも、岸から水面に張り出している、水深深めのカバーではないか、という二つのものである。

それから僕は高比重ワームのノーシンカーを取り出し、ピッチングでカバーを打っていった。しかし、前回の合宿からほぼ一年、ベイトタックルを使うのは下手をすれば二年ぶり近くになっていた僕のキャスティング技術の低下は泣きたくなるほどであった。なぜピッチングで正確にポイントに落とせない…毎週のように釣りに行っていたかつての僕が見ていたが、きっと泣いているに違いない有様であった。

こうした感じで農具側の流れ込み付近まで釣り上がっていった。途中ふと、濁りがとれていることに気がついた。「綺麗になったなぁ〜」なんていいながら水面を見ていると、4、50センチはあろかというバスが悠然と水深2、3メートルのボトム付近を泳いでいた。それも一度や二度ではなく、数回見かけた。 この魚を見てから僕はスピナーベイトを取り出し、これに心中すると決めた。色は白。「スモールマウスはスピナーベイトがお好き」ってどっかの本で書いていたのをずっと前に読んだし、デカイのを釣るならこれしかないだろと勝手に決め付けた。

ウェイインの時間との兼ね合いもあり、このまま西岸を釣り下ることにした。ただ今回は、リミットメイクもできたし、入れ替えすることしか頭になかったので、ボートポジションをパワーシャッドで岸打ちをしていたときから、若干離して、岸からのブレイクに沿ってスピナーベイトをスローロールした。ただ、キャストが決まらない… 例えばオーバーハングに対して中途半端なキャスティングをすると、その下のブレイクに潜んでいたバスがルアーに釣られて動き出してしまう。バスがルアーを追尾して、我に返った途端に、反転し一切口を使わなくなってしまうのである。 上手い人は、最高のポイントに常に最高のアングルで最高のキャスティングができる。バスが我に返る暇もないくらいに口を使わせる。だからここぞというときに結果を出す。しかし、ブランクをだいぶあけてしまった僕にそんな神業めいたことはできない。つまり僕には結果が出せない釣り方だということを、後々思い知った。 そうこうしているうちにウェイインの時間が近づいてきた。最期、根がかりでもして時間に遅れては嫌だと思い、パワーシャッドに持ち替えてゆったりとバックシートで釣りをしながらウェイインした。

結果は、ジェットスキーのおかげ?で釣った一匹でビッグフィッシュ賞をいただき、他の二匹はまさかのキーパーサイズ以下であった。若干サイズ的に恥ずかしいビッグフィッシュ賞である。メジャーはきちんと持っていかないと後で恥ずかしい目に遭う… 今回久しぶりにゆっくり釣りをして感じたのが「やっぱり釣りはおもしろい」ということである。蓄積されていく経験、その場その場の状況判断力、そして技術。どんなに上手い人でも上には上がいるのが釣りである。だからこそ楽しい。今度はもっといい釣りができるように、まずはキャスティングからなんとかしないと駄目だと思った合宿最終日であった。


トーナメント優勝の市毛・中川チーム